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東京地方裁判所 昭和44年(借チ)2034号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔主文〕 申立人が相手方に金二六九万円を支払うことを条件として、(一)申立人が東京都目黒区平町一丁目九番一五号祖父江幸男に別紙目録記載の土地賃借権を譲渡することを許可し、(二)本件借地契約の期間を昭和六四年一一月三一日まで延長する。

〔決定理由〕(申立の要旨)

1、申立人は、別紙目録記載の土地375.57平方米(113坪6合1勺以下本件土地という。)につき同目録記載の賃借権を有し、同地上に家屋番号二〇七番木造瓦一部亜鉛メッキ鋼板交葺平家建居宅床面積90.88平方米付属木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建居宅床面積14.87平方米(以下右二棟を本件建物という。)を所有している。

2、申立人は、本件建物及び右土地賃借権を主文掲記の祖父江幸男に売却する計画であるが、右土地賃借権の譲渡につき相手方の承諾が得られないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。

(決定理由)

1、本件の資料によると、申立の要旨として掲げた1の事実が認められる。相手方は、本件申立は許可すべきでないとし、その理由として、(一)本件建物は老朽化して経済的価値が乏しく、申立人の意図しているところは、本件建物の譲渡よりは本件土地賃借権の譲渡に主眼をおいており、このような譲渡を認めることは借地法の趣旨に反する。(二)相手方は、本件土地を自ら使用する予定であり、そのため、残存期間の満了或は本件建物の朽廃を待つている。(三)本件申立が許可され、譲受人において本件土地上に高層建築をすることになると、相手方居宅は、本件土地に隣接している関係上、通風、採光及びプライバシー保護の点において悪条件に追いこまれる。被申立人は、現在のままでも生計を維持することができるので、本件建物及び本件土地賃借権を譲渡する必要性がないと主張する。しかし、借地法は、借地上の建物に対する投下資本の回収という建物の保護に留意するに止まらず、これと併せて、経済的価値ある借地権自体を独立の財産権として保護する趣旨をも含むものであると解すべきであるので、(一)の主張は理由がなく、借地法は、増改築による借地権の存続を保障しているのであるから、建物の朽廃を待つというのは、借地人の利益に目をふさいだ一方的主張であり、借地期間満了の際における本件借地契約の更新の有無を現時点に予測することは極めて困難であるので、(二)の主張がなされただけで本件申立を排斥することはできず、(三)の主張は、将来増改築許可申立のあつた場合に考慮すれば足りることであり、(四)の主張は、それ自体を採用しがたいので、相手方の右主張は、いずれも理由がない。

本件の資料によれば、申立人が本件土地賃借権を祖父江幸男に渡しても、相手方の不利になるとは認められないので、本件申立は、これを許可すべきである。

2、附随の裁判

鑑定委員会は、借地権譲渡の場合、巷間に行われる名義書替料譲受の慣行を参考に、借地権価格の一五%相当の金員を財産上の給付として申立人より相手方に支払わしめるべきであるとの意見を提出した。当裁判所は、右意見に従う。鑑定委員会は、本件土地の通常の借地権割合は七〇%としながら、残存期間が九年弱であること及び本件建物が老朽化し、朽廃時期が遠い将来のことでないことを考慮し、借地権割合を六五%とするが、更新拒絶に正当事由が要求されるため、借地期間の進行にかかわらず借地権割合は下降カーブをとらないものというべきであり、また、増改築許可の申立ができるため、建物の老朽化にともなつて借地権価格は下降カーブをとらないものというべきであるので、鑑定委員会の右意見には賛しがたく、本件土地の借地権割合を通常の七〇%とみる。鑑定委員会の意見によると、本件土地の更地価格は、3.3平方米当り二二万五、〇〇〇円であるとのことであるので、価格については右意見に従い、財産上の給付額を計算すると二六九万円(万円未満四捨五入)となる。

よつて、本件許可の裁判にともない、申立人に対し、財産上の給付として二六九万円の支払を命じ、借地権譲渡により契約当事者が変更するので譲受人の立場を考慮するとき、借地法第二条の趣旨に鑑み譲受人のため最低二〇年の期間を確保せしめるのが相当であり、期間を昭和六四年一一月三〇日まで延長することとし、その余の附随処分の要を認めない。

(小山俊彦)

目録

(土地賃借権)

一、当事者

賃貸人 相手方

賃借人 申立人

二、借地

東京都中野区江原町二丁目二六番四

宅地 93.52平方米

(28坪2合9勺)

同所同番の一

宅地 1,078.14平方米

(326坪1合4勺)

のうち282.04平方米

(85坪3合2勺)

右合計 375.57平方米

(113坪6合1勺)

三、契約の目的

非堅固建物所有

四、期間

昭和五三年六月四日まで

五、賃料

昭和四二年一二月一日以降月七〇八〇円

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